Osamu Harada Memorial ”GALLERY INADOU"

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イベントの記録

ギャラリ-概要

原田脩作品集

原田脩

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                                   2015年6月吉日
平成26年度活動報告書

                                   館主 植田義浩

 梅雨時のギャラリーは自然があふれています。裏山ではホトトギスが声を限りに啼き交わしていますし、田植えの終わった田んぼでは蛙が大合唱を繰り広げ、蛙の声に誘われたように山からウリ坊がのこのこ歩いて下りてきて結構にぎやかです。そのうちホタルも飛び交うでしょう。

 溜池に面した桑の大木にたくさんの桑の実が鮮やかな紫色に実りました。童謡の「夕焼け小焼け」に歌われた「山の畑の桑の実を小籠に摘んだは幻か」の歌詞さながらに、美味しそうに熟した実が鈴なり状態になって、枝が曲がるほどでした。この桑の実に目を付けたのが廣中シェフ。ブルーシートを桑の木の根元に敷き詰め、やおら桑の木に登って枝を揺すりはじめました。バケツに溢れるほど採れた桑の実をしっかりと煮詰めてジャムを作りましたらこれが何ともいえずに美味しく出来上がりました。

 こんな情景を繰り返しながら、皆様のおかげでギャラリー稲童はこの8月に5周年を迎えます。常設展示の入れ替えも8回目となりました。今回は「脩は西へ」と題して西日本の寺社仏閣や滝を取り上げたほか、何人かのコレクターの皆様にお願いして原田脩の作品に里帰りしてもらい展示しています。

 振り返ってみますと、この一年も色々なイベントが出来ました。

 まず、ジャズ・ミュージシャンでミジンコ研究家の坂田明さんによる「世界初」のミジンコ写真展が開催されたのが昨年5月です。世界的な顕微鏡メーカーであるカール・ツアイス・ジャパンのご協力で生物顕微鏡を貸し出して頂き、地元の小中学生諸君130人が来訪し、坂田さんの「ミジンコをとおして命の輝きを知る」授業に耳を傾けました。アトリエ棟に宿泊した坂田さんがすっかりギャラリーを気に入って、坂田明ジャズクインテット「サカタカタツサ」の九州ツアー演奏会場として使うこととなり、7月にジャズコンサートを実施しました。120人もの聴衆が本物のジャズを楽しみました。

 11月にはギャラリーの仲間達によるグループ展を開催しました。京都の庭師浅田さん(本職は絵描きさん)の絵画、宮崎の師金丸さんの竹細工(現在は俳句に夢中)、京都の三井万千子さんのビーズ作品、京都胡田繊芸・胡田社長の染織工芸品、地元からは梶芳正さんの陶芸と、全国から5人の仲間がそれぞれの作品を持ち寄って展示しました。まったくジャンルの異なった作品でしたがそれぞれに良い感じで響きあっていました。この5人の皆さんが作品を前にギャラリーにいる様子は、アトリエ棟で遊んでいるときとは全く違った作家の顔付きになったのには感心しました。

 同じ11月に京都の染織の第一人者「染司よしおか」の5代目当主吉岡幸雄さんによる講演と吉岡さんを取り上げたドキュメント映画「紫」の上映会を実施しました。吉岡さんは法隆寺の国宝「四騎獅子狩紋錦図」の完全復元で菊池寛賞を受賞されています。ホンモノの十二単衣を持参して、染の実演を交えて、日本古来の染の伝統を話していただきました。化学染料と決別し、日本古来の草木や自然由来の染料に取り組んでおられる苦労話、とりわけ奈良、平安時代の染色や織の技術の高さなど伺って、「目からウロコ」が落ちるようでした。

 お正月には恒例の句会を開催しました。宮崎の金丸さんも、手紙による投稿で参加しました。
天賞の句は
「鷺草は 踊り子のごと 飛びたちぬ」(水田栄 96歳)

 3月瀧月忌には学習院大学教授島尾新さんによるギャラリートーク「雪舟の足跡---九州編」を実施しました。島尾先生は館主の古くからの友人で、中世水墨画の碩学です。国宝「山水長巻」の丁寧な説明にはじまって、雪舟の人生や人となり、当時の世相を背景にした水墨世界を開示していただきました。さらに雪舟が明から帰朝した折、なぜ九州にとどまったのか、長州の大内氏の庇護を受けていた彼が、大内氏の宿敵大友氏の居城府内(大分)に画室「天開図画楼」を構えた理由は何か、など九州における雪舟の意外な側面も教えていただきました。雪舟の残した庭園が英彦山や川崎町、さらには平尾台の麓にも残されているのは意外でした。

 5月には熊本からミュージシャン、嘉門勇三さんがご夫妻で見学がてらマイクセットを持参してやってきました。ギャラリーのピアノを使っての弾き語りに居合わせた仲間たちは大喜びしました。

 5年目を迎える今年も、様々なイベントを実施してまいります。この秋には久しぶりにお能の観世流シテ方坂口信男師、幸流小鼓方の飯田清一師においでいただく予定です。今回は特別に坂口師のご子息で、観世のお家元で修業を重ね、いまや観世流の花形シテ方の坂口貴信師にもご参加いただく予定です。

 これからも地域に根差した地道な文化活動に取り組んでまいります。皆様のご支援をあらためてお願い申し上げます。