Osamu Harada Memorial ”GALLERY INADOU"

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原田脩作品集

原田脩

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                                        大井 民夫 

 今回、水彩画を中心に展示をされるとのことで、原田脩氏の画業の本質を見極める上で貴重であり、尚且つ、その本領を確認し得る貴重な機会となりましょう。水彩画の作品群が素描ともどもに、油彩画とは異趣の魅力・楽しさを味わえるものとしてみ逃がすことは出来ません。

 そもそも、小倉高校美術部においては、顧問でありました、 師 吉松真司先生の影響もあり、伝統的に水彩画(鉛筆淡彩)を制作活動の第一歩として、写生の原点として捉えておりました。

 鉛筆淡彩の妙は、鉛筆の線を活かし、単なる下描きではない生きた線と淡彩着色による自然・事象との率直なふれあいを大切にするものです。水墨画や文人画の流れにも沿い通じる、気韻を感じさせ律動のある水彩ならではの持ち味であります。

 原田脩氏の水彩画にも、下絵(習作)の域を超えた、油彩画(本画)にも優るとも劣らぬ生気に満ちた息遣いそのものが感じとられます。

 本画の省略の利いた簡潔で凝縮された画面からは、詩的な祈りの想念を喚起させられますが、これは何より現場での写生による水彩画が下地・土台にあっての発展的な仕業ではないかと推察されます。

 極めて速いタッチで対象全体の真髄を、的確に表現し尽くし、無駄のない構成は、まさに水彩画家として面目躍如たるものでしょう。

 さて、浄土寺の浄土堂(兵庫県小野市)はつとに有名ですが、同行したのは西隣(加西市)の法華寺・一乗寺でありました。夏季のことでもあり、少し体調不良であったのかもしれませんが、写生は早々に切り上げました。行程は神戸より山陽線にて加古川線にて粟生、ここで北条鉄道に乗り換え法華口で下車、存続の危ぶまれる無人駅の路線。ここから常のように徒歩にて田園地帯を散策がてらと思いきや、タクシーの要請でした。

 帰りは神戸電鉄にて新開地下車、早速居酒屋にて一杯。何とか元気回復の様子でありました。

 原田脩氏との長年の付き合いに「お酒」は決して欠かせません。語り口同様に酒を介しての間合いの楽しさ、無言の沈黙が最上の肴となり、最高の酒席となりました。春宵、日本酒をぬる燗で彼を偲びつつ。

平成二十五年三月二十五日 合掌